PSPには期待していたから | テレビゲームのソムリエになりたい - yzxのつぶやき

PSPには期待していたから

 当初から、販売店として見たとき『PSPは年末じゃなくてもかなり売れる』という自負があったので、今年は良作が揃った市場があり、供給過剰的な状態だったので無理をしてまで発売して欲しくなかった。

 ソフトが供給過剰になれば新作が値崩れを起こし、そうなれば当然のように中古の価格の下げも早くなり、結果的に損をするお客さんが多くなる。

 また、本体をいくら売っても利益が出ない世界なので年に一番市場が盛り上がる時にそういったもので店の利幅を圧迫して欲しくはなかった。
 しかし、PSPで遊びたいゲームがある人に対して、早くそのゲームを遊ばせてあげる事がメーカーの良質なサービスでもあるし、早く出すことによって消費するお金のサイクルが早くなる事で企業活動がかなり順調に進める事ができるのもうなずける。

 ただし、数年前より六割も市場規模が減少したという業界において、メーカーよりも販売店が先になくなってしまうというのは肯けない。
 返品制度のない市場性故にゲームが売れなくても、その負債を抱えるのは卸売や小売店なのだ。

 これにより、メーカーはたくさんのゲームを作ることにより、たとえゲーム自体が売れなくてもどんなタイトルでも最低一本は仕入れる小売店がある程度あればメーカーの儲けに直決する。
 当然ながら、小売店もそういった手法に対してゲームの扱いを減らし、古本等を扱って売上を確保せざるを得ないのだ。当然、そうなればゲーム業界が縮小に繋がるのは当然である。何やら、デフレスパイラルと同じ感覚を覚える。

 なんでPSPの話になるのかと言うと、私はPSPには業界の活性化を期待していたのだ。ここ数年は4・5・6・9・10月になると期待できるゲームが出てこなかったりする。
 小売店はその辺りの営業をどう乗り切るかが重要にもなってくる。
 メーカーに対して言えば他社との競合がない分ビジネスチャンスでもある。私はそういった月にPSPを売って欲しかったのだ。最低でも期待できるタイトルが少ない来年の1月辺りで。

 で、当然ながら発売日が決まったのが発売日の一ヶ月前。ちなみに、その時点でソフトメーカー側に実機が届いていなかったという情報があったので、品薄になる事は簡単に予想された。私は、とある投票掲示板で当初はプレミアで+5000円は堅いとずっと言っていた事が今まさに起こっているのだ。

 発売から一週間が経った本日でもヤフオクではバリューパックが平気で3万円で売られたままだし(当日のPSPでのヒット件数約4000)、埼玉では4万を超える店も出ている。秋葉でも当然のようにプレミア価格で販売されている始末だ。少なくとも一万台以上はヤフオクの転売やプレミアで定価以上になっている事になる。

(実際の所、台数が少なすぎたので単品を税込25000円、またはオープン価格で売り、台数がある程度は揃うであろう来年3月あたりで20000円への値下げという販売戦略をとっていれば今回のような混乱はかなり抑えられたであろうし、あの価格でソニーは採算が取れているという話はおそらく300万台以上の出荷をする事によっての話だろうから、かなり急ぎすぎた感覚はあったと思う。正直な所、現在の業界で据え置き型トップのSCEはゲームの質が違うのだから、DSに対して普段通りに、余裕を持って構えていた方が販売店としては友好的に捉える事ができた。逆に言えば、DSがそれ以上の危機感をPSPサイドに持たせたのではないかとも思える。)

 そして、PSPはUMDという独自の技術を採用しているとはいえ、中身はMDと同じ様な感じの『駆動』式によってソフトを動かすものでかなりの精密機械といえるし、何よりもウリである液晶画面の大きさが他の部品の場所を取っている事も容易に分かった。もしかしたら、輸送途中で壊れるなんて事もありえるかもしれないと。
 しかも、急遽発売日が決まったようなものなので、検査体制もままならないだろうし、現場はかなり急ピッチなハズだからキズや埃が液晶についていたりの初期不良がかなり出るのではないかとの予想もかなりあった。

 現実として、初期不良もそこそこの数が出ているようである。これはPSP関連の各掲示板を回って見て独自に予測して見た数値だが、その数は全体出荷の最低3%はあるだろうと。
 初回出荷が20万台と伝えられているから、その数はなんと6千台にも上る。

 結果として、PSPを手に入れる時に何らかの損をしたお客さんは国内で16000人以上はいるという規模だ。(初期不良で買った人は、品薄で店頭在庫がない事により、交換もすぐには行えないという自体なっただろうし、せっかく買った日に遊べないという事はかなりの迷惑でもある。更に並んでまで買ったとなれば最悪だ。)
 しかも、そこはゲーム機なので50代以上の人間で買う人は少ないだろうし、値段的な見地から10歳以下の子供が買う事もないだろう。それを踏まえ、国内に住む11歳以上49歳以下の160000人が不満を抱えたのではないかと思うと実にぞっとする話だ。

 結局の所、きちんとした情報をもっていない弱者が損をしているのである。

 PSPの登場により業界の活性化は一時的に行われたが、その活性が落ち着けば、損をした人たちのゲーム離れはさらに進んでいくだろうし、今回の出来事はそれを早める事になった(インターネットのそこかしこで行われているネガティブキャンペーンがそれだ)のではないかと言う事を私は1ヵ月以上前に予測していたのだが、こうして現実に目の当りにするとつらいものである。

 私はこの業界が好きだからこそ、この業界の盛り上がりは大事だと思っているし、それ故にPSPに対しては愛憎があるのだ。今後はこの活性を持続できないと今後の業界は更に厳しいものになるだろう。

 おせっかいかもしれないが、現在のPSPで手にしている確かな情報は『構造的な問題がある(ボタンの配置による部品のずれ)』『来年二月あたりまでは同じ型が出荷される』という事だ。PSPをクリスマスプレゼントで買うなら仕方がないとして、販売店として見たら、現在出ているソフトにあまり魅力を感じない(本体に魅力を感じる)という方は来年の3月あたりまでは様子を見るのが賢い方法かもしれない。

 PSPは残念ながらバッテリーが思った以上に短い(みんゴルで4、5時間だが真・三国無双だと一時間とちょっと)から、携帯ゲームとしては不便かもしれないし、少なくとも来年の夏あたりまでにはバージョンアップ(バッテリーのパワーアップや動画の対応再生方式が増えるかも)があると思うのでそれを待ってもいいかもしれない。

↓ついでに業界のPSPとDSに対する認識↓
 最新のファミ通でPSの歩みが紹介されている。年ごとにPSのキャッチフレーズや売れたゲームの本数が書いてあるのだが、注目はPS2が販売された翌年からのテレビゲームの本数である。
 昨今の音楽業界と同じ様に、一目で販売本数が激減しているのが分かると思う。これはPS2によってDVD市場が出来上がり、その市場がゲーム市場を喰っている事を顕著に示すものだ。
 PSPも動画が楽しめる事に事により、同じ様な状態が今後起こる事も予想されうる事である。当然、ゲームを作るクリエーターにとって市場の縮小は死活問題になる事だし、PSPのゲームはPS2のゲームを作る事と対して変わらず、新しいアイデアを持ったDSの方が、クリエーターはゲームを作りやすいと言える。今後、優良なクリエーターがDSでゲームを作れば、当然のようにDSに優良なゲームが集まるという事にもなる。
 また、開発コストの問題がそこにはあり、PSPのソフト制作はPS2のソフト制作と同じ様に1本1000万からちょっと力が入るだけで億単位になってしまうそうだ。DSは64の開発ツールと同等程度のもので安ければ600万円程度(作りこめばさすがに一億は超えるそうだが)で済むそうで。現状、新作ソフトがあまり売れなくなった業界でサードパーティーがDSにPSP以上に参入しているのはそういった現実もあるのである。
 DSの初期不良は0.5%以下。国内60万台はすで売っているので300人程度、これは20万台のPSPの三倍の売上本数でありながら、なおかつ初期不良はその1/10。しかも、次回入荷や店頭に在庫がすぐあったりするのですぐに交換できる。よって、販売店ではニンテンドーDSの方が断然にウケが良い。なので販売店がDSを薦めてきてもごく自然な行為でもある。

 ちなみに、先日発売されたテイルズオブリバースはドラクエの発売があった分もあり、予想以上にたいていの小売店で売れ行きが悪いです。年明け後に新品が5000円以下で売られていても不思議ではないくらいです。
 GCのスーパーロボット大戦もかなり苦戦しているようで、丁度それを買う層がPSPの購入層とも重なっている事により、某店ではすでに市場適正価格より1000円安く売っているような状態でした。やはり、年末商戦とはいえ供給過剰なようです。

 蛇足ですが、トヨタの話。
 とある車を売ったら人気が集まりすぎて、ディーラーがプレミアを付けて売った事により、お客さんが損をした事があったので、年内に発売予定で人気が集まったハイブリッドのハリアーとクルーガーが米国でのプリウス人気もあって品薄になる事より、以前のようにならないよう発売を来年に延期しました。
 早く欲しい人にとっては残念でしたが、どのお客さんに対しても同じようなサービスを展開できるよう地に足をつけ、お客さんの損にならないよう地道に商売をしています。PSPも見習って欲しかったね。